こんにちは、NGSのYukiです。
弊社はERPのコンサルティングサービスをメイン業務としており、とくにDynamics 365 Finance and Supply Chain Management(D365 FO)を得意としています。D365 FOは多機能なERPシステムですので、備忘録をかねて本ブログの中で色々と機能を紹介していきたいと思います。
本記事は、前編 (D365機能紹介)新機能 Financial tags のご紹介(1.設定&入力編) からの続きとなります。
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活用編
生成されたFinancial tagsは、GL(一般会計)モジュールの自動決済(仕訳消込)機能(*6)で活用できます。たとえば建設仮勘定から固定資産に振り替える仕訳データがある場合、登録時のデータ(借方)と振替時のデータ(貸方)に同じ値(ID)をFinancial tagsに入力しておきます。自動決済機能で消込条件にFinancial tagsを指定することで、仕訳データの中から同じIDをもつ貸借が等しいトランザクションをマッチング検索し、自動的に消込記録が作成されます。
消込記録はGL(一般会計)モジュールの決済画面で確認できますので、月締め前の振替仕訳の入れ忘れチェックや、未払データ等のチェックに活用できます。(*7)
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会計レポートへの出力
さて、ここまで仕訳消込に焦点をあててきましたが、仕訳データのオプションという意味でいうと、Financial dimensions(財務分析コード)と似ているため、その違いが気になるところです。実際にMicrosoftでも、Financial tagsとFinancial dimensionsとの比較表を出しています。
詳細はこちらを見ていただくとして、私のほうで簡単にまとめてみたのが以下の表です。Financial dimensionsに比べると、かなりお手軽に扱えるものとなっていますが、逆に整合性チェックや自動入力等は期待できないようです。Cost centerなど、事前に決まっている項目はFinancial dimensionsに持たせて、IDやNumberなど都度発生するデータはFinancial tagsに持たせるなど、要件にあわせて組み合わせて使うのがよさそうです。
# | 比較項目 | Financial tags | Financial dimensions |
1 | 事前設定 | 簡易 | 少し複雑 |
2 | 仕訳時の入力チェック | 非対応 | 対応 |
3 | マスタ連携(自動デフォルト値入力) | 非対応 | 対応 |
4 | タグ値のマスタ管理 | 不要 | 事前にシステム登録必要 |
上記以外の観点として、会計レポートでの集計に使えるか気になる方もいらっしゃるかと思います。結論を先に申しますと、2023年12月現在、Financial tagsを会計レポートで使用するのは(標準では)難しいようです。
まずFinancial tagsは、Financial report(Management reporter)では対応しておらず、GL(一般会計)モジュールの他のInquiry画面/Reportフォームでも表示/集計項目に入っていません。
また、昨今話題のPower Platform連携、とくにPower BIへの出力については、Financial tagsを含んだ仕訳データを表現するData entity(Entity名は"General journal account entry reporting")はあるものの、2023年12月現在OData連携に対応しておらず、Power BIからOData経由のデータ取込も、あるいはVirtual entityでのDataverse経由のデータ取込も、いずれも標準では非対応となっています。
ただし、一応Custom entityを自作してODataでの入出力に対応させたり、Data management画面(recurring data job)からの出力でPower BIにデータ連携させることができるので、以下のように、少しの手間でPower BIにてFinancial tagsを使った集計はできそうです。
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まとめ
上記のように、Financial dimensionsと比べて、非常にお手軽に管理できるFinancial tagsですが、現状、全機能で標準対応していないこともあり、要件にあわせて、二つの機能を組み合わせて導入するのが現実的かと思われます。自動決済機能だけでも、取り入れる価値は大きいかと思われますので、ぜひ皆さんも試してみてください。
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